言葉のちから ちょっと素敵な出来事
5歳の◎◎ちゃんと3歳の○○ちゃんの姉妹は、クリニックに来ると真っ先に2人揃って診察室のドアから可愛いお顔をのぞかしてくれます。それはとてもかわいらしく小児科医を続けてきて良かったなと思う瞬間です。
お姉ちゃんの◎◎ちゃんは2歳頃に、お菓子は食べてもお母さんが心をこめて用意した食事を食べてくれなかったり、お昼寝や夜の就寝時間が定まらず遅寝・遅起きでした。お母さんから見ると勝手気ままな行動も気になり、(◎◎はもしかしたら障害があるのではないかしら・・)と相談を受けたこともありました。私から見ても、子育て経験の豊富なスタッフから見ても◎◎ちゃんはとても利発で活発なだけで、来院したときなど、一緒に遊んであげるのが楽しみなお子さんでした。ただお母さんが◎◎ちゃんの好き勝手を少々容認しすぎる影響が出ているのではないかと思われました。「とりあえず早寝早起きをする。おやつと食事の時間をはっきり伝え実行する。」といったことをアドバイスしました。おやつの時間と関係なく「お菓子!お菓子!」とぐずっても、時間になるまではお菓子探しの探険をしてもらいました。利発な◎◎ちゃんはこの遊びが大変気に入って、お母さんと一緒におもちゃ箱や本棚などをお菓子を探しまわりました。時にはお母さんがお菓子をそっと隠しておくと、それを見つけて大喜びしました。早寝早起きをして昼寝の時間も定まり、おやつも決まった◎◎ちゃんの様子は大きく変わってきました。ママ友達から、「この頃◎◎ちゃんはなんだか急におりこうさんに成長したね。どうしたの?」と聞かれるようになりました。そこでお母さんは、早寝早起きのことやおやつと食事の工夫をしたことを話したところ、ママ友達のなかにも早寝早起きブームが起こり、◎◎ちゃんのお母さんの体験が活かされました。
さて前置きはこのくらいにして、ちょっと素敵なお話に入ります。
つい先日の診察の時に、◎◎ちゃんのお母さんが下の2枚の絵を持ってきて、こんなお話を聞かせて
くれました。◎◎ちゃんはお絵かき大好きな幼稚園の年中さんです。ある日家族の絵を描きました。
(左下)パパとママと妹の○○ちゃんは可愛いお顔でお洋服も着ています。でも◎◎ちゃんの自分の
お顔はおメメが笑っていないしお洋服も着ていません。◎◎ちゃんはこれまで「上手だね」・「えらい
ね」・「しっかりし ているね」と褒められても可愛いといわれたことがなくどこかで悲しく思っていた
ようです。この絵を描いた時に、お母さんが、「どうして◎◎のおメメだけ違うの?」と尋ねると、
「私だけ可愛くないから。鏡を見ると私はこういう目をしている。誰も可愛いといってくれない。」
と言って泣いたそうです。祖父母やママ友達から可愛いといわれても、「ママに頼まれて言わされて
いる」と ますます逆効果になってしまったそうです。ある日、いつものように診察室のドアから
2人の可愛い顔がのぞいていました。目をきらきらさせてありったけの笑顔を見せてくれました。
私は心のそこからかわいいな〜と思いました。そして「◎◎ちゃんはどんどんかわいくなってきたね」
と思ったとおりに伝えました。しばらくたって◎◎ちゃんはまた家族の絵を描きました。(右下)
そこにはかわいいおメメの◎◎ちゃんのお顔が一番大きく描かれていました。私が何気なく、
うれしく感じたとおりの言葉をただ伝えただけなのに、こんなにも◎◎ちゃんの心に届いてくれまし
た。またそうした出来事をわざわざお伝えくださったお母様も本当に素敵だと思います。
そしてこのちょっと素敵な出来事をこのコラムを通して皆様と共有し、再び言葉の力に想いをよせて
いただけたら嬉しく思います。
うれしかったこと・ありがたかったこと・感激したこと・素敵なこと・元気が出たこと・・・・・
どんどん言葉に表してその言葉のエネルギーを分かち合いましょう。
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