佐藤小児科医院 電話042-441-2772 調布市西つつじヶ丘1-57-94
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はじめに

コラム

    思春期のトルネード

 前回に続けて、思春期のことを綴って見たいと思います。戸惑いよりもさらに激しいトルネードに譬えてみました。思春期をすでに通り抜けたご両親は「そうそう、我が家にもこんな事があったわね。」と共感される方も多いと思いますが、かわいい盛りの子供たちのご両親には「うちの子に限ってそのようなことは考えられない。」と思うことでしょう。思春期の現われは千差万別ですが、その時に親が慌てず、騒がず、ドンと受け入れてあげることができれば、お互いの心の痛手も最小限に済むかもしれません。
 仕事も終わり、夕食の片づけも済んで、私は何気なく新聞の折り込みチラシを眺めていました。宝石店のチラシで、ダイヤやルビーの豪華な指輪の写真が所狭しと並んでいました。子供の目には、私が夢中に見ている様に映ったのでしょう。次男が寄ってきて「お母さん、どれが欲しいの?ぼくが大きくなったら働いて絶対買ってあげる!」と言いました。今でもその時のことを思い出すと涙腺がうるうるとしてきます。もちろんこの約束はまだ果たされていません。おそらく覚えているのは私だけでしょう。
 そんな優しい息子達にもいつしか思春期がやってきます。食事が済むと自分の部屋にさっさと引き揚げていき、話しかけると返事がなかったり、厳しい表情でいやいや返事をしたり、親からみれば怒るような事でもないのにいきなり腹を立てて壁を蹴飛ばし壁に穴が開いたりしました。(男の子の育った家には一つや二つの壁の穴はあると思います。)「あのかわいかった子ども達はどこに行ったの?」という思いが出てきました。おそらく自分自身に対しての不安や怒りのなせる技と思いますが、激怒して私を突き飛ばし襖に大きな穴を開けたこともありました。その瞬間は少しオーバーな表現かもしれませんが(生き地獄を見た)というような感覚でした。今でも私の中に鮮明に残っています。
 激しいトルネードもいつしか過ぎ去り、壊れ散った心の破片を拾い集めてお互いに修復しようとしますが、なかなか大変な作業です。いまだに修復されない部分も残っています。でも私はこう思うのです。親に対しての不満は数多くあるかもしれませんが、親として一生懸命やってきたことは紛れもない事実です。子ども達はとりあえず丈夫な体に成人したし、縁あって親子になり、お互いに学び合えたということに事に感謝して、これからはそれぞれが自分の今生のテーマを目指して生きていったらそれで良しと。
 思春期のトルネードがいつになったら過ぎ去るのかわからない渦中にいた時には本当に不安でした。その時不安な私を支えてくれた言葉が「置かれた立場で最善を尽くす」でした。この言葉を何度も何度もつぶやきながらこのような状況で、私に出来る事をこつこつ続けているうちにいつの間にか青空が見えていました。どんな時にも、トルネードの真っ黒な雲の上にさえもいつもいつも燦然と太陽が輝いているということも実感しました。
 大なり小なり思春期は訪れますが、どんな時にもその奥には明るい光が輝いていることを心に描いて、嵐が過ぎ去るその時まで私たちはお互いを励まし合って明るく元気な気持ちでやっていきましょうね。

「すこやかに育て」
いつの世も親の願いです。

  
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