佐藤小児科医院 電話042-441-2772 調布市西つつじヶ丘1-57-94
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コラム

    休日診療当番医を終えて思うこと

 7月31日は休日診療当番医でした。休日診療の形態はセンター方式と在宅輪番方式の2種類があり、調布市は後者の方式です。調布市医師会会員の開業医が輪番制にそれぞれの医院で診療をしています。私のクリニックは住宅街にあるため、たくさんの方が一度に押し寄せた時には道路は車の洪水で御近所の方にいつも御迷惑をかけています。また薬局が近くにないので院内で薬を処方するため、スタッフを総動員しても手が足りず、いつもてんてこ舞いです。これまでにはスタッフや私の体調が悪い時もあったので、当番日が近づくと全員に緊張感が走ります。休日診療に行かれたことのある方はご存知と思いますが、小児科の待合室はごった返しています。日常の診療ではお母さんと病気の子どもだけで来院されますが、休日では病気の方が一人でも家族全員でおいでになる事が多く、待合室のスペースがとても間に合いません。(出来る事なら必要最小限の方で御来院いただきたい!!) またほとんどの方は当院に受診するのが初めてです。(いわゆる新患さん)新しいカルテを作成したり、体質を聞いたり、(吐きやすいとか、熱性けいれんがあるとか、卵アレルギーがあるとか、すぐゼーゼーするとか・・)今日までの病気の経過をきちんと伝えていただくのにかなりの手間がかかります。私は大事なことを見落とさないように詳しい問診を心掛けているのですが、この問診に慣れていない方が圧倒的に多く、スタッフも経過を聞き出すのに大変な苦労をしています。
 今回の休日に受診された方の中から、二つの例を選んでお話ししてみましょう。

@ 3歳6ヶ月の女の子です。7月30日に左の耳を痛いと訴えたので耳鼻科受診。耳は異常がないといわれました。朝37度8分、夜に39度の熱があり、熱さましを服用しました。7月31日朝にも39度の発熱があり11時頃に熱さましを服用しました。午後1時半と4時半に嘔吐があり、咳き込むようになって、夕方に来院しました。診察所見は扁桃腺がやや大きいだけでその他には特別な所見はありませんでした。嘔吐があるので薬も無理には飲ませられないことと、治療を急がなければならない所見がなかったので、今日は解熱剤の座薬だけ処方して様子を見ていただく事にしました。診察が終わった後に、お父さんが「アデノウイルスの潜伏期間は何日ですか?」という質問をされました。私は「どうしてですか?」と質問の理由を尋ねたところ、「双子の妹が1週間前にアデノウイルスに感染して高熱を出していたので。」ということでした。そこでアデノウイルスの迅速診断をしたところ陽性に出て患児もアデノウイルス感染症と診断できました。もし問診表に妹さんの事を書いていただければ、遠回りをしないで、診断と病気の説明が迅速に出来たのにと思いました。(問診表に兄弟姉妹の様子を書くところもありましたが、双子の妹さんがいる事も書かれていませんでした。)

A 3歳4ヶ月の男の子です。7月29日昼過ぎに気持ちが悪いと訴え、食欲がありませんでした。熱37度7分。30日の夜も37度7分。31日の朝嘔吐が1回あり、37度5分の熱があるということで来院しました。診察所見では特別なものは何もありませんでした。しかし全身の倦怠感が強く、見るからに脱水を起こしている感じでした。もっと詳しく話を聞いてみると7歳のお姉さんがいて、お姉さんの習い事やイベントに毎日のようにつきあって睡眠不足が続き、29日は疲れて夕食を食べずに寝てしまったとのことです。翌30日も欲しがらなかったので朝にパン半枚、夕方ゼリーを1個、水をコップ3倍位飲んだだけでした。尿を調べてみると尿にはアセトン体が大量に検出され脱水の状態でした。7月後半は猛暑が続いていた事もあり、まだ3歳の弟さんにはかなりの負担がかかっていた事を説明し、疲れて食欲がない時にはせめてそれに見合ったイオン水(経口補水液)を心して与えないと危険な熱中症になるということを伝えました。ゆっくり休ませて、経口補水液をこまめに飲ませていただくことにしました。この症例は、詳しく経過を聞かないと、吐き気止めの薬と風邪薬を処方されて脱水が見逃されてしまい、危険な状態になってしまったかもしれない症例です。

初対面のドクターに混雑した状況でいかに上手に経過を伝えられるかが、その後の治療の結果に大きくかかわってきます。お子さんのこれまでの健康状態・服用している薬の事・今回の病気の詳しい経過等、大事なポイントを逃さずに伝えられるように宜しくお願いいたします。また休日という事もありお父さんが赤ちゃんを抱っこしている事が多いのですが、診察に不慣れで衣服の扱いや診察の時の押さえ方がスムーズにいきません。休日診療ではゆっくりと診察が出来ませんので患者さんを抱っこする時には慣れた方にお願いいたします。また「普段の日は働いているので・・」を理由に休日診療を利用される方も見受けられますが、あくまでも急患の方を対象に開かれていますので、急ぎでない時には平日にかかりつけの先生を受診していただいた方がより適切な治療が出来てよろしいかと思います。  なんとか無事に今回の休日当番医も終了出来ましたが、より充実した休日診療のためにも、調布市にセンター方式の休日診療所が開かれることを願っています。この度のような大震災が起こった時にも市民の皆さんのお役にたてるセンター方式の休日診療所が一日も早くできます様に。

  いつも診療所の玄関にお花を飾ります。 
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