佐藤小児科医院 電話042-441-2772 調布市西つつじヶ丘1-57-94
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コラム

 誰でも始めは初心者

 東日本大震災の試練の年がようやく明けて、2012年がスタートしました。神戸では1月17日の阪神・淡路大震災の17回目の慰霊祭で午後14時46分にも東日本大震災の被災地に向けて祈りがささげられました。大きな試練を乗り越えてきた方々の温かな祈りの波動は日本中の人々をやさしく包みこんでくれました。

私は医学部を卒業してから、すぐに小児科学教室に入局しました。病気の子ども達の診察・治療あるいは、乳児健診・健康診断などには毎日のように携わりました。しかし、おむつ替えをしたり、おっぱいやミルクを飲ませたり、離乳食や食事のお世話をしたりすることはほとんどありませんでした。小児科医になって4年目に、初めて私の体内で赤ちゃんを育み、出産し、おむつを替え、おっぱいをあげ、沐浴し、離乳食を食べさせ、抱っこして(抱っこだけは小児科医なのでたくさんする機会がありました!!)おんぶすることは、皆さんと同じく初めての経験でした。初心者の私にすべてを託した子どもは、不快な思いをすべて泣き声で教えてくれました。お腹が空いた・怖い音がした・寒い・暑い・体が痛い・おむつが濡れて気持ちが悪い・・・。夢中で泣き声を聞くうちに微妙に泣き声が違う事に気づきました。アッ、これはお腹が空いたのでは・・・アッ、これはおむつが濡れたのでは・・・アッこれは電話の音が怖かったのでは・・・などと自分が赤ちゃんになったつもりになって、泣くことで必死に何かを伝えようとしているわが子に向き合ってみました。2ヶ月3ヶ月経つうちに、これまでは胎内の静かなゆったりとした環境にいた赤ちゃんも、この外界の刺激的な環境にも慣れ、また新米お母さんの私も赤ちゃんの想いが少しづつ読み取れるようになり、泣くことよりも微笑んでくれる事が多くなりました。

 当時は布おむつだったので、おむつを毎日洗って干して畳んでの繰り返しです。そのうちお洗濯はちっとも苦にならなくなりました。ウンチのおむつは固形せっけんで汚れをすぐに洗って次の洗濯まで洗濯液に漬けこんでおかなければなりません。おむつを干す時には、おむつの両端のしわをピット伸ばしておかないと履きごこちが悪くなります。雨続きの日は、おむつにアイロンをかけて殺菌もしました。
 また元気な男の子の兄弟だったので、6ヶ月位になると何度も寝返りをしてベビーベットの柵に激突するようになりました。仕方なく畳にお布団を敷いて川の字になって寝ました。朝起きると蒲団をたたみ、お昼寝で布団を敷いて、お昼寝が終わったらまた蒲団をたたみ、夜になったら布団をまた敷いて・・・を繰り返しているうちに布団の上げ下ろしも全然苦にならなくなりました。面倒とも思わなくなりました。ついでにお天気の日は、可能な限り布団干しもしました。干した布団に寝る時はとっても子ども達が気持ちよさそうにしているのでそれ以来布団干しが趣味のようになってしまいました。
 離乳食は、ベビーフードのサンプルを試食した時に、おいしくない!!と思ったので、手作りをすることにしました。始めの頃は、味付をしないで素材の持つ味だけで食べさせるので、野菜は良い食材を選ぶようになりました。自分でまず味見をしてから食べさせるうちに、おじや一つを作るにも食材の相性がある事に気づくようになりました。私はお料理が上手でも得意でもありませんでしたが、簡単な離乳食から徐々に献立らしい離乳食に進んでいくうちに自然と作る事も早くなり、応用もきくようになり、いつの間にか食事作りも人並みに出来るように育ったと思います。
 乳児健診をしていると、離乳食で悩んでいる方が少なくありません。私が思うのに、一つはベビーフードのネーミングと離乳食の本が影響しているのではないかと思います。ベビーフードには(麻婆豆腐)とか(ひき肉入り野菜のシチュー)などと大人の食事と同じような料理名が付いています。まだお料理の苦手な新米ママには同じようなものを手作りしなければならないと思うと、ハードルが高すぎてついついベビーフードになってしまう様です。離乳食の本の多くは、まとめて作って電子レンジで解凍する方法を教えています。 まとめて作ると野菜のおいしい煮汁が活用できません。また作りたてのお粥と冷凍チンのお粥では美味しさが違います。もちろん作りたてのお粥がおいしいです。私は冷凍チンのお粥ならば、ご飯を野菜のスープで煮たお粥を勧めています。皆さんも食べ比べてみて下さい。お子さんに食べさせるものですからお母さんが少しでも、赤ちゃんの体に良くておいしい食事を用意していただきたいと思います。
 来る日も来る日もおむつを洗濯して、食事を作り、時には病気で辛くて夜泣きする子どもに寄り添い、育児によって本当に鍛えられたと思います。あえて不必要な無理をすることはありませんが、初めての体験を、誰もが出来る体験ではありませんので、チャンスと思って初心者らしい感性で取り組んでみましょう。

  2012年が平和でありますように。


この立派な南天はお墓参りの際に、故郷の生家の庭から採ってきたものです。ひと月以上新年の玄関を華やかに、懐かしく飾ってくれました。

 

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