佐藤小児科医院 電話042-441-2772 調布市西つつじヶ丘1-57-94
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コラム

 巷野悟郎先生(90歳)の「今、子育てを考える」の御講演を拝聴して

 平成23年10月16日に東京小児科医会設立30周年記念の学術講演会がありました。日本の戦後の混乱期から現代に至るまで、一貫して母子保健に携われ、その時代のニーズに適した様々な提言と実行を精力的に続けてこられた巷野先生の御講演を拝聴することが出来ましたので、今回はこの貴重なお話の一部を取り上げて綴ってみたいと思います。

 育児(保育)はどう育てるかではなく“Care”です。0歳、1歳、2歳の子ども達は、何にも出来ない、何も分からないただの哺乳動物です。事故から守り病気から守り四六時中世話をして、すべてに手をかけてあげる事が必要な生き物です。まさに無条件に“ Care = 育児 ”の必要な生き物です。その事を現代の親御さんは理解できていないようです。赤ちゃんは小さいだけで、しゃべらないだけで、歩けないだけで、頭の中は大人と同じだと思っている節があります。生後2ヶ月位になると、育児相談の際に「寝てくれないんですよ。とか、おっぱいを飲んでくれないんですよ。」( 私のために )という発言が出てきます。さらに生後4ヶ月位になると「どうして寝てくれないの。どうしておっぱいを飲んでくれないの。」とその原因を子どもに向かって発するようになります。少しだけ言葉が理解できるようになると「〜だから〜してあげる。とか、〜したら〜してあげない。」といった大人の世界の取引のような接し方(無償の愛から離れた)をし始めます。3歳位になると赤ちゃんだった子どもも、少しは周りの状況を理解でき、自分の気持ちもはっきりしたり、過去の記憶が蘇えったりするために大人の思い通りにはいかなくなります。それは成長の喜ぶべき姿なのに、「反抗期」と子ども達に対して大変申し訳ない言葉で表現されています。このように最近の親御さんは赤ちゃんを知らない、子どもの事を知らないのではないかと思います。“Care”を忘れてどのように育てるかに走る傾向があり、7ヶ月〜8ヶ月の子育て相談で「いつ頃から英語を習わしたら良いでしょうか。RとLの発音は小さいうちから・・・」等という質問が普通に出てくるのです。 また先生は、幼い子ども達がどんどん家庭から離れていくことに憂いを感じている事も取り上げました。働く母親を支援する手段として0歳児保育の拡大や保育園の増設あるいは病児保育施設の設置に拍車がかかっているこの頃ですが、これが本当に子ども達の幸せな未来のためになっているのか?出来る事ならば「育児=Careの基本は親」でありたい。病気の時こそ家庭で安心して“Care ”されたいと子ども達が叫んでいる。とお話になりました。

 私も日頃、先生と同じ思いを持っていました。保育園を増設するよりも、むしろ育児休暇(1〜3年間位)の義務化を推進して、乳幼児期の大切な時期に子どもから親へのアタッチメント(乳児と特定の人物との間につくられる愛と絆、信頼関係のこと。愛着という。)と、親から子どもへのアタッチメントをしっかりと形成する大切さを伝えたいと思います。アタッチメントがしっかりと形成される事により、子どもは自分の事を認め、愛され価値ある存在であると認識し、他の人も尊重できるようになります。また親もわが子の存在に心から幸せを感じたり育児に喜びを見いだせるようになります。
 自分の事を振り返ると、私はアタッチメント形成がうまくなされないまま大人になってしまったと思います。そのために多く悩み傷つき、(あるいは他者を傷つけたかもしれません)自分の事をいとおしい存在と認められるまでに長い年月がかかりました。子どもを育てさせてもらった事で、後ればせながら両面からのアタッチメントが随分と形成されたように感じています。
 幼い子ども達とかかわりのある御両親、祖父母の皆さん、保育の関係者、隣のおじちゃん・おばちゃん、どうぞ幼い子ども達のアタッチメントが豊かに育っていきます様に、優しい眼差しと手を差し伸べてください。

 天候に恵まれて
 神代植物公園の
 秋薔薇はきれいでした。
 
  大谷登志雄様作品
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